注目される「ワンヘルス」:人・動物・環境を健康に

杉下智彦東京女子医科大学教授は、オンライン講演「ニューノーマル時代の人類と自然の新しい関係」として「ワンヘルス」(One Health)の重要性を語った。ワンヘルスは「人、動物、環境は相互に密接な関係があり、それらを総合的に良い状態にすることが真の健康である」という概念だ。(オルタナ総研コンサルタント=室井 孝之)

同教授は、WWFが11月12日開催した「パンデミックと自然破壊」で強調した。 ワンヘルス(One Health)は、 1998年マレーシアで発生したニパウイルス感染症(オオコウモリより感染した豚が感染源とされる感染症)をきっかけに、野生動物保護や獣医学領域の専門家が立ちあがり、2004年に米国で開催された野生生物保護学会が「One World One Health」をテーマにしたことが端緒である。

「人、家畜、野生動物の健康が、生物多様性と生態系機能にリンクしていることを認識する」「土地と水の使用法が、健康維持に深く関連することを認識する」等12項目からなる「マンハッタン原則」という行動計画が提言された。 人、動物、環境それぞれの健康に責任を持つ関係者が分野(国際連合食料農業機関、国際獣疫事務局、世界保健機関、世界銀行、国際連合児童基金等)を超えて協力関係を構築し健康を推進していくという構想である。 同教授は、「新興感染症の始まりは、その多くが自然界にある未知のウイルスと人類が遭遇することによって発生する。先進国の飽くなき欲望と過剰な利益追求が、調和のとれた生態系を破壊している」と指摘した。 同教授は「経済発展こそが国民を幸福にすると信じられ, 社会が経済に奉仕している状況を作った。COVID-19感染は、先進国や都市部の効率性を追求した人類の新たな脆弱性によって急速に拡大した。ニューノーマルの時代にあってSDGsを達成に必要なことは、人と人間信頼と血の通ったコミュニケーションである。地球全体を意識したパラダイムへの変革を通して、持続可能な地球のための新しい価値観に立った社会のデザインが求められる」と締め括った。