五感を使った「旅の疑似体験」 室内で気分を変えられ、高齢者にも好評

生産者から話を聞きながらお茶と銘菓を味わえる、五感を使った介護レク

新型コロナウイルスの影響で、介護施設では従来のレクリエーションやイベントを実施しにくい状況になっています。そうした中で企画された、オンライン会議システムを使った新しいレクリエーション「お茶旅」。withコロナのレクリエーションの形として、さまざまな広がりを予感させる企画です。 【画像】こんなお菓子です。交流の様子などを見る

「お茶旅」とは、介護施設と地方の生産者・観光協会などをオンラインでつなぎ、入居者がその地域のお茶やお菓子をいただきつつ、生産者たちと交流できるという企画。施設にいながら、五感すべてを使って旅を疑似体験できるというわけです。「お茶旅」を企画したのは関東、関西を中心に100以上の病院、介護施設を展開する平成医療福祉グループ。初回は東京都葛飾区の介護老人福祉施設「ケアホーム葛飾」で実施されました。企画が誕生した経緯について、同グループ介護福祉事業部サービス企画課の水戸抄知さんと城野葵さんは、こう話します。 「入居者のために、施設での日常から離れた時間を提供したい、という思いがはじまりでした」 コロナ禍にあってもできることはないかと考える中で、水戸さんの前職での旅企画のコーディネーターという経験から生まれたこの企画。実施を検討するにあたり、入居者だけではなく、コロナ禍でイベント販売などができなくなった生産者にも喜んでもらえたらという期待もあったそう。 そこで、以前から知り合いだった島根県津和野町でお茶の製造・販売をする「香味園」代表のリコッタ(上領)瑠美さんに相談したところ、快諾。今年8月27日に1回目の「お茶旅」が実施されることになりました。当日入居者たちに用意されたのは、香味園の「ざら茶」と津和野銘菓の三松堂「こいの里」。さらに津和野町の観光パンフレットも手元に配られました。感染予防のため、10人程度のユニットごとに画面の前に集まってスタート。お茶やお菓子をいただきながら、リコッタさんや「津和野町地域おこし協力隊」の片山春花さんが話すお茶の特徴や津和野についての話に耳を傾けます。 実はリコッタさん、オンラインでの交流に不安を抱えながら、当日を迎えたそうです。 「画面ごしなので、こちらと入居者の方たちとの間に温度差が出てしまうのではないかとドキドキしていました。でも始まったら、おじいちゃん、おばあちゃんたちの笑顔に本当に癒されました。みなさんにほんの少しでも旅行気分をお届けできていたら幸せです」 生産者とのやりとり、お茶やお菓子の事前準備などは、企画課チームが、当日のオンラインの準備や進行は施設のスタッフが担当。いつものお茶の時間にオンラインの設定が加わった程度なので、スタッフに大きな負担がかかることなく、スムーズに進んだそうです。 当日の司会を担当したのは、「ケアホーム葛飾」作業療法士の秋原健利さん。 「『昔行ったことあるよ』と過去の記憶を思い出す方がいたり、『おいしいよ』と味覚の感想を伝えてくれる方がいたり。終わったあとに『次はいつやるの?』と楽しみにされている方もいらっしゃいました。実は今回はスタッフ分のお茶やお菓子は用意していなかったのですが、『私たちの分はないの?』と言われてしまって(笑)。スタッフたちも楽しめていたからこその言葉なので、よかったなと思いました。私たちスタッフが楽しめないと、入居者の方も楽しめないですから」 同施設の介護主任・飯野岳志さんも、1回目のお茶旅は「大成功だった」と言います。 「コロナに関係なく、施設に入居すると外部の方との接触が難しくなってしまいます。海外とつないだり、ご家族が参加したり、いろいろな展開が考えられるので、今後も楽しみです」 ケアホーム葛飾では、本年度中に全6回の開催を予定しています。初回以降は、広島県世羅町、徳島県三好市、愛媛県四国中央市、岡山県高梁市などへの「お茶旅」を計画。職種や立場の垣根を越えて、介護職、リハビリ職、看護師、本部スタッフが、“みんな一緒に”入居者さんに寄り添えるこの企画の次の開催を、入居者も施設スタッフも楽しみにしているそうです。