歩いて九州一周、970キロ! 67歳男性「見知らぬ人の優しさに触れた」

 福岡県直方市の石田博道さん(67)が10月、九州を単独で歩いて一周した。長距離ウオーキングに取り組んで約15年。長く心に温めてきた目標を達成した。行く先々での住民との触れ合いに後押しされた25日間約970キロの道のりだった。

元病院看護師の石田さんは15年ほど前、長く続けられそうな運動としてウオーキングを始めた。「ハードなスポーツは続かんだろうと考えた」。約10年前、直方市のウオーキング愛好団体「チーム直方麻生」(麻生信行代表)に入ると健康維持の目的を超え、長距離を歩くのに熱中。「年上の人が頑張っているから」と触発された。

行橋市から大分県別府市まで夜通し歩く、恒例の「行橋~別府100キロウォーク」を7回完歩。九州一周は「どうせならやってみたい」と自然と膨らんだ目標だった。3年前には高校の同級生で約40年間バンドを組んでいた親友が早世。「自分の体を顧みることが増え、動けるうちに動こうと気持ちが固まった」。1日20~45キロ歩くトレーニングを積み重ね、10月5日、自宅をスタートした。

◇    ◇

重さ約7キロのリュックサックに「九州一周ウォーク挑戦中 10/5福岡県直方市スタート」と紙を張っての挑戦。初日から約8キロにわたる冷水峠越えが「長くてつらかった」。福岡、佐賀、長崎と歩き、長崎県島原半島から熊本県へフェリーで渡った。

「一番きつかった」と振り返るのは熊本、鹿児島の県境越え。熊本県水俣市から八代海沿いを南下するルートを計画していたが、スマートフォンで調べると山側に向かう国道から鹿児島県伊佐市に入るルートを示された。

戸惑ったが、なにぶん知らない土地。厳しい峠越えの途中、何度も「この道で大丈夫なのか」と不安になった。だが県境付近の駐在所の警官から「こっちの道で正解ですよ」と言われ救われた。この日は9日目で初めて日暮れ後もライトを使って歩き、全行程で最長の1日55キロを歩いた。

鹿児島県入り後は薩摩半島の先端まで南下。大隅半島へ船で渡り、宮崎、大分、福岡と北上した。日向灘を右手に見ながらの道のりの中、宮崎県延岡市で宿泊した旅館のおかみは早朝、「出発が早くて大変だろうから」と手作り弁当を持たせてくれた。

毎日休みなく歩く中、歩道が極めて狭い1キロ以上のトンネルのへりを、身をかがめながら歩くなど、歩行者に優しくない道路事情も味わった。一方、毎日のようにリュックの張り紙を見た見知らぬ老若男女がゼリーやドリンクなどを差し入れて応援してくれた。「人の優しさに触れるたび、ピッチが上がった」

大分市付近に入った頃から、道路標識に「北九州」の文字が。黙々と歩んだ日々が終わりに近づいたと実感し「涙が出そうになった」。10月29日午後4時40分ごろ、家族や親友の家族、元同僚、チーム直方麻生の仲間らに盛大に迎えられゴールした。

目標を成し遂げ、ウオーキングの楽しさを改めて実感できたという。「もはや歩くことは完全に生活の一部。チームの仲間と一緒にまた進み始めたい」