高齢者外出自粛の健康影響 調査

新型コロナウイルスによる外出の自粛によって、高齢者の健康にどのような影響があったか調べるため、兵庫県の大学などが行った大規模な研究結果がまとまりました。
人との関わりの減少や食生活の悪化などで、介護のリスクが高まる実態が浮き彫りになっています。

調査は、西宮市と地元の武庫川女子大学が合同で行ったもので、市内の高齢者5000人を対象にアンケートを行い、55%にあたる2700人余りから回答を得ました。
この中では、まず、「歩くのが遅くなった」、「体重が減少した」などの項目をもとに分析したところ、介護を必要とする一歩手前の「フレイル」と呼ばれる状態の人は全体の17.3%でした。
また、新型コロナウイルスによって趣味やボランティアなどの社会活動が妨げられた人は74.1%、家族との交流が減った人も79.2%に及びました。
活動や交流が減るほど「フレイル」の人の割合が増える傾向にあるとしています。
さらに、食事の品目が少なかった人に占める「フレイル」の割合は、多かった人の2倍近くに上っています。
調査にあたった武庫川女子大学の大滝直人准教授は「外出自粛による詳細な健康への影響の実態が明らかになった研究は全国でもめずらしい。十分な運動や食事、それに他者との交流を維持できるサポートが必要だ」と話しています。

【交流や食事の変化も影響】
今回の調査は、西宮市と地元の武庫川女子大学が合同で行ったもので、ことし8月、無作為に選んだ市内の高齢者4996人にアンケートを郵送し、このうち54.9%にあたる2743人から回答を得ました。

〈「フレイル」判定〉
まず、「半年間で体重が減少したか」や「以前に比べて歩行速度が遅くなったか」など5つの質問に答えてもらい、そこから身体機能や認知機能を判断し、介護を必要とする一歩手前の「フレイル」と呼ばれる状態に該当するかを判定しました。
その結果、「健康」な人は22.3%、「プレフレイル」が60.4%、「フレイル」が17.3%でした。

〈社会活動への参加は〉
ボランティアや、趣味、スポーツなどの社会活動への参加がどう変化したか聞いたところ、「非常に妨げられた」が39.4%、「かなり妨げられた」が34.7%で、社会活動がしにくくなった人があわせて74.1%に上っています。
また、社会活動を「再開したい」と答えた人は83.8%いましたが、感染への心配や意欲、体力の低下から、回数を減らしたり再開しなかったりする人も16.2%いました。

〈運動量の違いでは〉
「荷物の持ち運び」や「ジョギング」などの活動をどのくらい行っているかなどから、運動量の多い人と少ない人とに分類しました。
そのうえで、運動量と「フレイル」の関連を見ると、運動が多かった人に占める「フレイル」の人の割合は10.9%だったのに対し、運動が少なかった人では29.8%と、3倍近くに上りました。

〈食生活の多様性も影響〉
また、肉類や緑黄色野菜などの10種類の食品を食べる頻度を尋ね、食生活との関連を調べたところ、食事量や品目が多かった人に占める「フレイル」の人の割合は11.3%だったのに対し、少なかった人では20.8%と、2倍近くに上りました。

〈家族・友人との交流〉
さらに、家族や友人との交流の減少と介護リスクの相関関係を調べました。
家族との交流が「ぜんぜん妨げられなかった」と答えた人では、「フレイル」の割合は14.6%だったのに対し、「わずかに妨げられた」「少し妨げられた」と答えた人では16.6%、「かなり妨げられた」「非常に妨げられた」と答えた人では17.8%と、交流の頻度によって「フレイル」となるリスクが高まる可能性があるとしています。
友人との連絡についても同じ傾向で、「ぜんぜん妨げられなかった」と答えた人では「フレイル」の割合は13.6%だったのに対し、「わずかに妨げられた」「少し妨げられた」と答えた人では17.2%、「かなり妨げられた」「非常に妨げられた」と答えた人では、20.9%となっています。

【自粛で腰を痛めた女性は】
西宮市の戸口裕子さん(76)は、新型コロナウイルスの感染への不安で、ことし2月からスーパーに行くのをやめるなど外出する回数を減らしました。
また、通っていたスポーツクラブも休会し、友人と会う機会も失われました。
緊急事態宣言が出されていた期間はリビングで長時間テレビを見て過ごすなど、さらに自宅にこもりがちになったといいます。
そのころから、戸口さんの体に変化が現れ始めました。
腰が曲がり、急激に痛むようになったのです。
8月になってからは、自宅の郵便受けに郵便物を取りに行くのもしんどくなったといい、先月中旬には入院して、手術を受けました。
10日は近所の老人会の集まりに3か月ぶりに参加して、友人との交流を楽しみました。
戸口さんは「新型コロナウイルスのせいで外に出なくなったために腰をどんどん痛めてしまったと思う。運動できる機会はありがたいし、何より人と交流できることがうれしく大事だと思う」と話していました。

【西宮市では栄養指導も】
高齢者の「フレイル」を予防しようと、西宮市では「西宮いきいき体操」という健康体操を8年前から推進しています。
この体操は、最大10種類の筋力運動を行うもので、市では、おおむね10人以上のグループが週1回以上体操を行うことなどを条件に、理学療法士や作業療法士が体操を指導したり、体力測定を行ったりしています。
10日、市内の上甲子園地区の老人会では体操教室が行われ、60代から90代の男女およそ30人が参加して体を動かしました。
この老人会は、新型コロナウイルスの影響で4か月間活動を休止し、ことし7月に活動を再開しました。
さらに老人会では、健康作りのため地元の大学の教授と学生を招いて栄養講座を開きました。
参加した人は1日の食事をテーブルに並べられた食品サンプルから選んで、栄養バランスを測定し、食事についての指導を受けていました。
参加した80代の女性は「栄養バランスが悪いと知ってショックです。いつも気ままに食べてしまうので、これから気をつけたい」と話していました。

【専門家“意識持って防止”】
調査にあたった武庫川女子大学の大滝直人准教授は、今回の結果について「外出自粛による健康への影響の実態が明らかになるのは全国的にも珍しい。高齢者が社会活動になかなか戻れておらず、社会活動の停滞が介護リスクを高めるという悪い影響が出ている」と話しています。
そのうえで、「これから気温も下がって外に出たくなくなる季節を迎える。散歩などを習慣づけたり、家族とも日ごろからコミュニケーションを図ったりするなど、介護リスクを高めないための意識付けをしてもらいたい」と呼びかけました。