20歳未満の中絶件数と、避妊の普及・若者の草食化の関係

20歳未満の中絶率は約6割というデータがあり、早い段階での正しい性の知識の普及や、安全で簡便な避妊方法の確立は急務と言えます。20歳未満の中絶の「割合」は高いのですが、実は「件数」はここ数年ずっと減少傾向です。地道な性教育とピルの普及による効果がゆっくりと表れているのでしょうか。若者の草食化に関する調査データとの関係も気になるところです。

20歳未満の中絶の「割合」は高いのですが、実は「件数」はここ数年ずっと減少傾向です。地道な性教育とピルの普及による効果がゆっくりと表れているのでしょうか。中絶件数と若者の草食化に関する調査データとの関係も気になるところです。

20歳未満の中絶率は約6割、中絶件数は減少傾向

厚生労働省の衛生行政報告例と人口動態調査をもとに計算された、ここ最近に関する20歳未満の中絶率のデータは約6割と高く、早い段階での正しい性の知識の普及や、安全で簡便な避妊方法の確立は急務と言えます。

緊急避妊薬が医師の処方箋なしに薬局で手に入るようにするべきだという動きも出てきており、性教育が単なる「セックスについて教える教育」ではなく、「自分や相手の性の健康を考えることで身につくライフスキルを教える教育」として、義務教育に組み込まれることが望まれます。

しかし、20歳未満の中絶の「割合」は高いのですが、下表の通り、最新の人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移によると、実は「件数」はここ数年ずっと減少傾向です。

人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移 平成30年度 衛生行政報告例(厚生労働省)人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移 平成30年度 衛生行政報告例(厚生労働省)

これは、20歳未満だけに限らず、中絶件数の総数や各年代別の件数を見ても同じ傾向がみられます。20~24歳の年代だけ、ほかの年代よりも増加傾向の年がありますが、それでも20年前と比較すると中絶件数そのものは減少してきていると言えます。

ホルモン剤による避妊の普及により、中絶件数減少か

中絶件数が全体的に減ってきている要因として、1つは「ホルモン剤による避妊」がここ20年でわずかずつではありますが、広まってきている可能性が考えられます。

平成11年に避妊用の低用量ピルが認可され、その後、平成20年からは月経困難症(月経痛)治療薬として保険適応の低用量ピル・超低用量ピルが各種発売されていっています。

月経困難症治療薬としてのピルには避妊効果があるわけではありませんが、作用機序が避妊用のピルと同じく「排卵を抑制する」というものなので、結果として避妊も兼ねた服用になってるケースも少なくありません

年齢階級別にみた人工妊娠中絶実施率(女子人口千対)の年次推移 平成30年度 衛生行政報告例(厚生労働省)年齢階級別にみた人工妊娠中絶実施率(女子人口千対)の年次推移 平成30年度 衛生行政報告例(厚生労働省)

これらの薬剤の発売年と、中絶件数減少のタイミングを見ると、ある程度一致しているのではないかと考えられます。

若者の性交経験率は、中絶件数減少に影響しているのか

中絶件数減少のもう1つの要因として、若者の「性的なことへの興味の減少」が考えられます。つまり、20歳未満で性行為を行う人や回数そのものが減っているのではないかということです。

『青少年の性行動全国調査』は、1974年から2017年まで8回にわたって、財団法人日本性教育協会(2012年4月1日から一般財団法人 日本児童教育振興財団内 日本性教育協会に名称変更)が「青少年の性の発達と行動の実態を全国規模で調査し、生育および家庭環境、社会と文化的環境などとの関連を明らかにすること」を目的として実施しています。調査の対象は、全国の中学・高校・大学生(ただし中学生については1987年以降)。

ここで調査されている内容を見てみると、たとえば、草食化の指標のひとつとなる性交経験率の推移については、第6回調査(2005年)では、高校生男子が26.6%、高校生女子が30.3%だったのに対し、第7回調査(2011年)では、高校生男子が14.6%、高校生女子が22.5%と急落しています。第8回調査(2017年)にいたっては、高校生男子が13.6%、高校生女子が19.3%とさらに減り続けています。

性行為の機会が減れば、たとえ確実な避妊をしている人の割合が増えていなくても、予定外に妊娠する件数そのものは減るでしょう。

婦人科医の立場的には、単にセックスの回数が減ったから妊娠数が減って中絶件数が減ったのだ、と考えるよりも、「地道な性教育とピルの普及による効果がゆっくりとあらわれてきたのだ」と考えたいところです。デジタル化(2次元化)が進み、「生身の人間と付き合うのが面倒だと思う」若者が増えていると感じることもありますが、実際「若者の草食化」がどのくらい影響しているのかは、医療現場からは見えてこないのです。

なので、後者であることを期待して、日々確実な避妊方法をお伝えしていっています。